鍼が痛いかどうか、そのことより優先すべき大切な話

そもそも、なぜ鍼灸を受けるのか

前回は鍼の感受性について書きました。鍼の刺激をどう感じるかは個人差があり、敏感な人もいれば鈍感な人もいます。感受性にしぼって書いたわけですが、鍼の感じ方で鍼灸治療の善し悪しを判断しましょうというわけではありません。

鍼治療を受ける前提として、整理しておくべきことがあります。

それは、鍼治療を受ける目的です。あなたが何のために鍼灸院へ行くのか、その目的によって鍼の刺激をどう受け止めるのかも変わってきます。

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医療と慰安

これまでもお話してきた内容ですが、重要なことなのでもう一度。鍼灸を医療として受けるのか、慰安(いあん)として受けるのか、これは受ける側も施す側も自覚しておく必要があります。

優れた説明をされている鍼灸師の栗原先生のブログも合わせてご覧ください。

施術時の刺激(痛み)に焦点を当てつつ医療と慰安を考えてみます。

そもそもの目的が体の不調を改善すること(医療行為)であれば、多少の痛みはガマンする必要もあります。

しかし、その場だけ気持ちよくなれればよい(慰安的)という目的であれば痛みがないほうが好まれます。鍼灸院へ来院される方は、圧倒的に前者が多いと思われます。

であれば多少の痛みはガマンしてね、ということになります。例えばケガをしたときの外科的な処置や、歯科での虫歯治療でも同じです。痛いかもしれないけど、治るための医療行為であると受ける側も覚悟をしています。

ゴールがはっきりとイメージ(不調をおこす前の体)できていると言えます。
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では反対に歯科での虫歯治療が、痛くない治療を優先するあまり虫歯が治らなかったとき、それでも良いと思えますか?「まあ、いいか」とは言えないはずです。医療では、治療を受けている時間よりも、治療後の時間、快適に過ごしている時間に価値があるからです。

慰安としての鍼灸、医療としての鍼灸

当院の鍼治療は医療行為です。であれば、〈鍼の刺激が痛い・痛くない〉ことと〈不調を改善する〉ことの優先順位は自ずと決まります。医療と慰安の区別を意識しておくことは治療を施す側、受ける側にとって重要となります。

慰安:施術を受けている時間に価値がある- その場を重視
医療:施術後の時間に価値がある    - その後を重視

慰安の場合

慰安

施術を受けている時間に価値を感じていますので、その後の体調がどうであるかは、それほど大きな問題ではありません。例えば、図のように徐々に不調を感じてきたとしても「慰安」として受けた施術への不満はない、もしくは少ないと言えます。

また、施術を受けるタイミングや頻度は自分で決める場合がほとんどです。体のケアに対する優先順位はやや低い傾向にあると言えます。

医療の場合

医療

医療では体の不調を改善し、施術後の快適な生活に価値があります。

図では施術の刺激を快(赤)、不快(緑)で表現していますが、どちらに感じるのかは受け手の感受性の問題も含みますので、両方を記しています。もちろん痛みが少なく、体への負担が少ないことが受ける側にとっても良い施術です。

あくまでも施術後の快適な時間に価値がありますので、施術時間や施術の頻度は医療者の提案に沿って受ける必要があります。当然ですが、体のケアに対する優先順位は高い状態と言えます。

まとめ

鍼灸治療を医療と慰安に分けてお話した理由は、鍼灸を受ける場所に関係します。単に、はりから「慰安」を連想する人はごくごく少数でしょう。

しかし、実際に鍼灸を受ける場所は鍼灸院だけではなく、病院、接骨院、マッサージ院、場合によっては整体院(鍼灸師資格をもちながら屋号は整体院)と様々です。

慰安的な整体施術の後に部分的に鍼灸を用いたり、マッサージと鍼灸を組み合わせていたりと医療と慰安をミックスさせた施術メニューや方針の治療院も多く存在しています。

同じ「鍼灸施術」であっても受ける環境や鍼灸師の意識、受け手の意識によって慰安にも医療にもなり得ます。

お互いの認識がかみ合ってなければ、お互いにとって不利益な時間を過ごすことになります。鍼灸治療を受ける目的をしっかりと認識したうえで、求める価値を提供してくれる鍼灸院を選別することをおすすめします。

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谷口 一也

はじめまして。谷口一也です。1979年愛媛県伊予市(中山町)で産声を上げました。 マイペースで我が道を行くB型。 育児と鍼灸に精を出す毎日です。 自宅での映画鑑賞やカフェ巡りが趣味。