鍼の刺激と感受性について

告白

告白しよう。

私は鍼灸師でありながら、鍼をされるのは苦手である。

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誇らしげに言うことではありませんが、治療を受けるのであれば鍼よりお灸のほうが好きである。

ただ、鍼を受けることが苦手だからと言って、鍼をする側になれないわけではありません。現に私は鍼灸師として毎日鍼治療を施しています。

鍼未経験のまま入学し、衝撃デビュー

私が鍼灸師になろうと思ったは高校3年生。鍼治療を受けたこともなかったのですが、なぜか興味が湧いてきました。直感を信じ、鍼の実物を見たこともないまま鍼灸の学校へ。鍼の初体験は鍼実習の時間でした。

ペアになった学生同士、お互いに鍼を打つのです。1年生の私は、忘れられない衝撃的な鍼デビューとなりました。プロ野球選手に例えるならば、巨人の助っ人外国人、呂明賜(ろ めいし)ばりの衝撃デビュー。(初打席、初ホームラン!)

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足三里というすねにあるツボへ2㎝鍼を入れてみましょう。」という課題でした。相方はKくん。

私の足三里に勢いよく入っていく鍼。「おう!おう!おう!」と言う私をよそに、鍼はどんどん身体に入り、ビンビンと響く感覚におどろきました。

予定より深めに入った鍼。先生がチェックして、「はい、抜いていいよ。」と。鍼を抜こうとするKくんはフンフン言っている。そう、抜けなくなってるのです!必死で抜こうとすればするほど、抜けないし痛い。

先生を呼べばいいのに、となりのベッドで練習している友達に手伝ってもらうことに。その友達もフンフン言って、やっと抜けた鍼。その形状、一生忘れません。

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こんなんなってますけど!!
(実際にはここまで曲がってなかったかもしれないけど)

鍼は細いため、ちょっとした力ですぐに曲がってしまいます。鍼のヒビキ感覚に驚いた私はギュッと力が入ったのでしょう。その瞬間に鍼はグニャッと曲がったのです。

元々、刺激には敏感なほうである(いや、ビビりやすい)ことも手伝い、ちょっとした鍼のヒビキ感覚にも警戒する身体になってしまったのです。実習の時間はペアを入れ替えながら鍼の練習を行います。鍼をする人の手の感触、性格も鍼の実技にはおおいに影響してきます。相手によっては実技の時間が恐ろしく感じたものでした。

鍼をする側の感受性

徐々にわかってきたことがありました。それは、鍼をする側の感受性によって鍼の操作に違いが生まれること。

例えば、鍼を受けることが大好きな学生は、自分が鍼をする側になったとき、鍼を入れることにちゅうちょしない確率が高い。一方、私と同じように敏感で鍼の刺激が苦手な学生は自分が鍼をする側になったとき、慎重にゆっくりと鍼を入れていく確率が高い。

もちろん一概にその通りとは言えません。時と場合、または流派によって刺激を強くしたり弱くしたりと調整も必要になります。

ただ、もともとの資質としてイケイケ派なのか、慎重派なのかを察知する能力は、ビビりの私には自然と身につきました。

初めての鍼治療になかなか踏み込めないあなたへ

イケイケ派と慎重派。派閥ではなく、一人の鍼灸師の中にその両者がいます。その割合いがどちらに偏っているかによって刺激の強度にも差がでます。鍼灸師同士であれば、その人の雰囲気や流派で察知できるものですが、鍼灸院に訪れた方がそれらを事前に察知するのは極めて難しいことです。

鍼にビビっている私の戯言に聞こえるかもしれませんが、私のように刺激に敏感な人が一定数いるのは確かです。鍼治療に興味あるけど、痛いのはちょっとイヤだな二の足を踏んでいる人もいるはず。

そんな人たちに伝えたいことがあります。

1.鍼の刺激には幅がある

鍼治療には多くの手法、流派が存在しています。それぞれの体に対する考え方によって使用する鍼の太さや長さ、操作が違います。

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【鍼の形状と刺激の強度】
鍼の太さ:細い鍼=弱  太い鍼=強 
鍼の長さ:浅い=弱  深い=強

例えば、腰痛の人を治療する場合、腰の痛いところの筋肉に深く長い鍼をする方法もあれば、痛いところにごく浅い鍼をする方法もあります。腰に10本の鍼をするかもしれませんし、腰に1本だけ鍼をするかもしれません。また、痛い腰ではなく離れた足のツボ、手のツボへ鍼をする方法もあります。これらは腰痛治療のごく一部です。その他にも様々な方法で鍼を行います。

【鍼の本数と刺激の強度】
鍼の本数:多い=強 少ない=弱

2.鍼灸師は受け手の感受性を読み取っている

鍼灸師は、一般の方に比べて数多くの鍼を体のあらゆる部位に受けた経験があります。体のどの部分に鍼をすれば、どのような感触、感覚になるのかという点は経験もあり想像することもできます。良い鍼灸師であれば、相手の反応を察知しながら鍼をしています。

痛ければやめる。そう簡単には言えない事情もありますが(そもそも鍼治療を受ける目的にも関わる問題ですので、その点は次回に)、少なくともあなたの気持ちに寄り添って鍼治療を施してくれます。

相手に寄り添う気持ち、それは鍼灸を施す身として重要なことだと肝に銘じています。学生時代のイタイ経験が役に立っていると信じています。

最後に

多少強引な流れですが、私の大好きなイチロー選手の動画を紹介して終わります。サプライズで中学生の部活にイチローが参加するという企画のものです。最後に中学生に向けて語ったイチロー選手の言葉は鍼灸師の胸にも響きました。

人の心の痛みのわかる、やさしい大人になってください。
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谷口 一也

はじめまして。谷口一也です。1979年愛媛県伊予市(中山町)で産声を上げました。 マイペースで我が道を行くB型。 育児と鍼灸に精を出す毎日です。 自宅での映画鑑賞やカフェ巡りが趣味。